擬人化の愚

 TVから聞こえてきたことが気になって調べてみたらあった。魚のことをよく知ってるタレントが、メジナを水槽で飼ったら1匹が「いじめられる」。傷ついてかわいそうなのでそいつを別の水槽に移したら、今度は別のやつが「いじめられる」…。これって本当に「いじめ」っていう言葉で括れることなのか? 単純に同種間のテリトリー防衛行動における闘争の結果じゃないの? そりゃそうだ。彼らは食い物の確保のための空間、オスならば繁殖期にメスを得るための空間を一定程度必要とするはずで、それがなければ自分の生存がおぼつかなくなるのだから。いわば、命を懸けて自分の「場所」を守ろうとする崇高な行為なのだ。それを、金にも食い物にも不自由していないノータリンの「バカガキ」が群れ集まって、数をたのんで劣位のものをいびるというアホな行為と同等に扱うなど、ボクは「メジナに失礼だ!」と言いたい。
 客員とはいえ、自然科学関係の国立大学の助教授の肩書きを表に出すのなら、衆人の目に触れる新聞等に出す文章には、もっと気を遣うべきだろう。こうやって動物の行動を「擬人化」していけば、肉食の動物がやってることはヒトの世界では「殺人」になってしまうし、ウスバキチョウは貴重な高山植物を食い荒らす「無法者」ということにもなる。こんなことは童話の世界で留めることであり、それにしてもあまりにリアルだと、「赤頭巾ちゃん」のオオカミから、オオカミは「悪いやつ」、「怖いやつ」っていうイメージを持ち続けてしまうことになってしまい、オオカミにとっては迷惑な話とも言える。
 そもそも動物の世界をヒトの世界に擬することに大きな無理がある。何年か前の某大学の入試問題にもあったのだが、「順位」の低い個体が集団にとどまっている理由を問うていた。いわずと知れたことで、集団に加わっていることの有利さ、すなわち餌、メスなどの確保や1頭でいるよりも他の動物の捕食から逃れられる…などが挙げられていた。つまり1人(あっ! 擬人化しちゃった…)でいると、餌は? メスは? そして外敵は? と四六時中考えねばならず、そのストレスの方が低順位で「いじめ」られるストレスより大きいからだと…。だから、集団の最低順位の個体を、「かわいそうだから」みたいな理由でその集団から引き離すと、先のヒヒの場合などは、単独になったことが胃潰瘍などを引き起こして死んでしまうのだと…。すべてが足りているヒトの世界では考えもつかないことである。もっとも、メシとねぐらが確保できるから留置場に入りたいっていうような発想はこれと同じか?
 「擬ヒヒ化」すれば、いじめなんてのは1人で行動を起こせず、群れることでしか自分のアイデンティティを実感できない低順位のヒトの、アホな行いであると思えて仕方がない。
 
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by luehdorf | 2007-03-03 10:57 | チョウなど | Trackback | Comments(5)
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Commented by 虫林 at 2007-03-07 17:40 x
luehdolfさん、こんにちは
全くごもっともなご意見ですな。
ヒト以外の生物の行動を人間の価値観で評価することは愚考の範囲をこえて、危険な所作になる可能性が大ですね。

Commented by たにつち at 2007-03-08 01:09 x
こちらへは初めまして!いつもお世話様です。
むむ~社会派ブログだったのですな(^^)
難しい話はわからないのですが、これからチョウシーズンも本格化してくるので、その活動や展開も楽しみにしています。
Commented by luehdorf at 2007-03-08 10:21 x
虫林さん
お久し振りです。忙しくて「石和健康ランド」にも出向けず、ちょっとストレスが…。
チンプやゴリラなど類人猿を除けば、動物の行動は単純に、餌は?そして異性は?という寿命まで生きることと次世代を残すことの2つに集約できると思います。それを情緒的に理由づけしていくことは、彼らに対して誤った見方をしてしまうだけでなく、ヒトの行動にさえ同様の錯覚をしてしまうことになってしまわないかと危惧するものです。
乙女高原のヒメギフはいつ頃でしょうか?
Commented by luehdorf at 2007-03-08 10:38 x
たにつちさん
「ログイン」の状態でコメントするとこうなるとは知らず、遂に貴兄のお目に触れることになってしまいました。「社会派」などとカテゴライズされると面映いばかりで、中年のオヤジの酔っ払ったときのたわごととご理解なさった方が…。
「田野畑その3」、田淵先生への想い等、これからも色々と「侵入」させていただきます。
衝撃の告白(?):'97年まで私塾をやっておりまして、その名前が「パルナス・ゼミナール」。もちろん「パルナッソス」からで、ゼミナールに合わせて「独語」表現にしたのですが…。ですから、たにつちさんのブログを発見したときはとてもうれしかったんです。
Commented by デッシー at 2007-03-10 14:15 x
おそらく、オオムラサキの幼虫は光周性に基づいてエノキの葉の成長を読み取っている。今日、エノキを室内に入れて無理やり成長を促そうとしているのだが、幼虫を木下に置いても動かない。室内が20℃にも関わらずだ。容器に入れて外保管しているときは容器内の温度上昇により越冬場所を移動することがあるが、それは一時的な移動であると思われる。
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